涯 如水 / Vagrant_Suntana

氷雪の山岳・漠々の砂漠、孤高の彷徨が記憶の断章に在りて時に蘇る

契丹のグル・ハン=耶律大石=《第二章27節》

前節より

「ご老人、漢の言葉は話されるか・・・・・」  「はい、商いで長安、洛陽、郅州にも居りました 」 「成れば、好都合、この文にあるオルデイ・イムルグとはそなたではないようだが・・・・」  「はい、オルデイさまは、吾等が長のイムルグさまの実弟。 年はかなり離れており 若い方ですが、酒泉府に出入りしております。 その文は酒泉に居られるオルデイさまが鳥海の兄さまから一昨日受け取られ、昼前に 私くしが預かる武威の店に鳩が舞い降りたしだいで・・・・・  私くし宛に添えられた連絡文には、明朝そちらに迎えに出る。 ついては、 120名の諸将を20名の小班に分割してもらい、武威の店の者が酒泉に案内しろと記されてありました 」

 

「なれば、耶律康阮さま、我々 タングートの兵30名も6班に割り、 明日より 20名の一団は それぞれ間隔を空けてこの場を出発いたしましょうぞ。 オルデイ・イムルグ殿の手の者が道中同じとあらば、吐蕃の間者の目が誤魔化せます。 道中の宿泊は西夏の軍営に委ねれば事足りましょう 」 「ご老人、今ひとつ お願いでき舞かな 」  「 いかがなことでしょうか 」  「この文を渡すべき欽宇阮将軍は蘭州からこちらに向かっている。 二十名の騎馬武者を率いて、 ただ 吐蕃と諍いで公道をおおっぴらに歩めぬ。 ましてや、遼の諸将である。 吾等とてこちらの言葉には通じておらぬ。 西夏の公務で旅立ったゆえ通事は付いておろうが、本日到来の予定であった。 無理を申すわけではないが、ひとつ、誰かを迎えに出してくれまいか 」

 

「なれば、耶律康阮さま、我々 タングートの兵30名も6班に割り、 明日より 20名の一団は それぞれ間隔を空けてこの場を出発いたしましょうぞ。 オルデイ・イムルグ殿の手の者が道中同じとあらば、吐蕃の間者の目が誤魔化せます。 道中の宿泊は西夏の軍営に委ねれば事足りましょう 」 「ご老人、今ひとつ お願いでき舞かな 」  「 いかがなことでしょうか 」  「この文を渡すべき欽宇阮将軍は蘭州からこちらに向かっている。 二十名の騎馬武者を率いて、 ただ 吐蕃と諍いで公道をおおっぴらに歩めぬ。 ましてや、遼の諸将である。 吾等とてこちらの言葉には通じておらぬ。 西夏の公務で旅立ったゆえ通事は付いておろうが、本日到来の予定であった。 無理を申すわけではないが、ひとつ、誰かを迎えに出してくれまいか 」

 

「今から、私が参りましょう、 今夜中に 古浪に入っておけば 明朝から 天祝のチベット族の村落を抜け、蘭州との境まで足が伸ばせます 」  「だれぞ 腕が立つ者を同行させようか 「 一人の方が・・・・・それに、将軍さまにお会いできれば その必要はございますまい 」